この話はフィクションです。舞台となる町や施設、人物、出来事は創作です。実在する地域・団体・人物とは関係ありません。
第06話 図書室の切り取られたページ
放課後の図書室で、二人は廃棄印と同じ年代の郷土資料を探した。棚の最下段から『水路町七不思議』という手製冊子が見つかる。子どもらしい表紙絵のなかで、黒い水路だけが測量図のように正確だった。
冊子は怪談を集めたものではなかった。暗い曲がり角を『消える道』、増水する坂を『水を呼ぶ坂』と呼び、それぞれの噂が生まれた現実的な理由を調べている。欄外には何度も、『怖いで終わらせない』と書かれていた。
ところが後半は、数日前に破られたような新しい切り口で失われていた。残った紙の繊維を透明袋へ入れる悠斗の横で、澪は貸出カードに今朝の日付が押されているのを見つけた。借りた者の名前だけが空白だった。
司書の藤崎先生は、二十五年前にも同じ冊子を探した生徒がいたと教えた。その一人は今、この学校で用務員をしている森戸さんだという。澪は校庭で何度も見た無口な男性の顔を思い浮かべた。
冊子を閉じると、棚の奥で別の本が倒れた。裏表紙に挟まっていた細長い紙には、白い傘が五本と『順を変えよ』という文字。インクはまだ乾ききっておらず、資料室の扉が廊下の奥で閉まる音がした。
追いかけても人影はなかった。森戸さんを疑うには証拠が足りないが、手がかりを置く者は校内へ自由に出入りできる。澪は調査ノートの推測欄へ初めて名前を書き、すぐに鉛筆で薄く消した。

