【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。
「青の余白で、生きている。」全50話中 第28話
七月。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。
前話まで
水を運ぶ途中、ひまりが一人で近道を選び、滑って膝を擦った。奈緒は強い口調で責め、ひまりは「子ども扱いしないで」と叫んだ。 その日は別々に食べた。夜、奈緒は怖かったから怒ったと謝り、ひまりも黙って予定を変えたことを謝った。仲直りは、どちらかが全部正しいことではなかった。
第28話 保存する夏
日差しが強くなると、魚を開いて塩気と風で乾かした。食べる前には十分に加熱し、匂いや見た目がおかしいものは捨てる。もったいなさより安全を選ぶ。
木の実は種類を確実に見分けられる少数だけ。保存容器には日付を刻んだ。棚に食料が並ぶと、今日の獲物がない日にも焦らずにすんだ。
魚を干す棚は、地面から離して風が通るようにした。最初の一枚は乾き方にむらがあり、二人は食べずに捨てた。悔しくても、体調を崩せばもっと多くを失う。
次は厚さをそろえ、位置を入れ替えた。食べるときは匂いを確認し、再び火を通す。保存食が三日分並んだ夜、奈緒は「貯金みたい」と言った。ひまりは「利息はつかないけどね」と返した。
干し棚の下へ落ちた一片を、ひまりは拾って火へ入れた。惜しい気持ちはあったが、砂の付いたものを戻せば残りまで傷む。奈緒は棚の脚へ新しい支えを結び、風で揺れないか確かめる。保存とは食べ物を取っておくことではなく、捨てる判断を遅らせないことでもあった。
乾燥棚の影が魚へ掛かる時刻を覚え、午後だけ置き場所をずらした。熱だけでなく風が抜ける向きも、二人で手をかざして比べた。
人物紹介
水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。
篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。
