【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。
「青の余白で、生きている。」全50話中 第15話
五月、合流直後。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。
前話まで
奈緒は救命いかだから水、ナイフ、救急用品、信号鏡を持ち出していた。ひまりには火と丈夫な小屋がある。ふたりの持ち物を並べると、ばらばらの道具が生活の一式に見えた。 船は遭難信号を出したはずだが、事故時の位置からかなり流された可能性がある。奈緒は希望だけでなく、不確かな点も話した。ひまりはその正直さを信じた。
第15話 共同生活のルール
ふたりは三つのルールを決めた。遠出は行き先と帰る時刻を残す。体調の異変を隠さない。大きな決定は相談する。
奈緒は大人だから命令するのではなく、安全の責任を多く引き受けると言った。ひまりにも意見を言う権利がある。島で最初の「社会」は、紙切れに書いた短い約束から始まった。
最初のルール案は奈緒が書いたが、ひまりは「遠出禁止」を消して「相談して決める」に直した。探索しなければ資源も救難場所も増えない。危険だから全部やめるのではなく、戻る条件を決めたいと伝えた。
奈緒は少し考え、うなずいた。大人の判断を押しつける方が簡単だったはずだ。最後に二人は、けんかをしたまま別行動しない、という一行を足した。島では沈黙も危険になり得るからだ。
板へ書いた決まりの最後に、ひまりは小さく「一人で決めない」と加えた。奈緒はその横へ「ただし緊急時を除く」と書き足す。二人は顔を見合わせ、具体的にどんな場合かを話した。曖昧な優しさより、迷った瞬間に使える言葉の方が島では頼りになった。
完成した板を入口へ掛けると、風で一度裏返った。二人は笑いながら結び直し、決まりが必要なときに読める向きで固定した。
人物紹介
水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。
篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。

