【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。
「青の余白で、生きている。」全50話中 第8話
四月下旬。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。
前話まで
ライターを日に当て、金属部の砂を落とす。乾かした繊維と細枝を組み、風を背中で遮った。五度目の火花で、茶色い繊維が赤く光った。 ひまりは息を細く送り、炎を育てた。太い流木へ移るまで手を止めない。火は暖房で、調理器で、煙の信号で、ひとりではないと思わせる生き物だった。
第8話 最初の食事
浅瀬に石を半円に並べ、潮が引いた後に取り残された小魚を捕まえた。金属缶をよく焼いて簡単な鍋にし、雨水で魚を煮る。
味は薄く、骨ばかりだった。それでも温かい汁が胃に落ちた瞬間、体の奥に電気が戻った。
魚を捕まえるまで、ひまりは礁湖で何度も空振りした。素手で追えば逃げる。石の隙間へ誘導し、出口を小石で狭くすると、一匹が浅い水に残った。命を取ることに手が止まったが、目をそらさずに終えた。
煮えた魚を半分だけ食べ、残りは翌朝に回そうとした。しかし保存できる温度ではないと考え直し、火を通した分をその日のうちに食べた。腹が満ちると眠気が来た。温かいものを食べるだけで、体はこんなにも安心するのだ。
魚の骨を砂へ捨てかけ、ひまりは手を止めた。小屋の近くへ匂いを残せば、何が寄ってくるか分からない。火から離れた浜へ運び、満潮でも戻らない場所へ埋める。食べ終えた後の始末まで終えて、ようやく最初の食事が自分の力になった気がした。
魚を捕った石の隙間には、次の小さな影が動いていた。ひまりは追わずに岸へ上がり、濡れた足を乾かしてから小屋へ戻った。
人物紹介
水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。

