【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。
「青の余白で、生きている。」全50話中 第9話
四月下旬。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。
前話まで
浅瀬に石を半円に並べ、潮が引いた後に取り残された小魚を捕まえた。金属缶をよく焼いて簡単な鍋にし、雨水で魚を煮る。 味は薄く、骨ばかりだった。それでも温かい汁が胃に落ちた瞬間、体の奥に電気が戻った。ひまりは魚の骨を土に埋め、食べた場所を清潔に保った。
第9話 家の条件
岩陰は雨に弱く、満潮時には波しぶきが届く。ひまりは浜から離れた少し高い場所に、流木でA字の骨組みを作った。結び目には漂着ロープと裂いた布を使う。
屋根はシートを二重にし、床には乾いた葉と細枝を厚く敷いた。入口を海へ正面に向けない。初めて中に座ったとき、そこは避難場所ではなく「ひまりの家」になった。
A字の骨組みは三度倒れた。左右の長さが違い、地面もわずかに傾いていた。ひまりは短い方の枝を無理に伸ばすのをやめ、立てる位置を変えた。結び目には、濡れると締まる場所と緩む場所があることも分かった。
完成した小屋へ雨粒が落ちると、屋根の一角から水が染みた。彼女は外へ出てシートの重なりを直す。完璧ではない。それでも背中を丸めずに眠れる広さがあり、荷物を濡らさない隅があった。
雨漏りの下へ容器を置くと、屋根を打つ音とは別に、一定の滴が響いた。ひまりは横になったまま、落ちる場所が広がっていないか耳で追う。背中を伸ばせる小屋は快適だったが、安心して眠るにはまだ手を入れる場所が多い。朝の修理箇所を暗闇で覚えた。
入口の高さは、立ったまま通れない程度に抑えた。広くすれば楽でも風を受ける。腰をかがめる不便さを、屋根が残る安心と交換した。
人物紹介
水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。

