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放課後、数字の向こう側。第10話「五十円の向こう」

園芸店で給与明細とカメラ価格を見比べる作業着姿の相沢澪 AI連載小説

【フィクション・投資に関する注意】
本作は架空の小説です。人物、企業、商品、学校、サービス、出来事などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。本作は特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。投資には元本割れなどのリスクがあります。実際の判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家へご相談ください。

『放課後、数字の向こう側。』全30話中 第10話

高校二年生の相沢澪が、身近な出来事を入り口に、投資と経済の仕組みを一つずつ確かめていく連載です。

前話まで
澪は身近な品物や出来事から、費用と利益、複利、サンクコスト、株主の権利、借入と手元資金、為替、分散、債券、手数料を確かめてきた。

第10話

土曜の朝、澪は商店街の端にある園芸店「みどり庭房」で、苗のトレーを日当たりのよい棚へ移していた。学校の許可を取った週末だけの仕事だ。店長から渡された給与明細を見ると、時給は去年より五十円上がっている。

「三か月続けたごほうび、少し近づいたかも」

休憩中、欲しかったカメラの展示札をスマートフォンで確かめた。ところが価格は、貯金を始めた春より六千円高い。店へ来るバス代も片道二十円上がり、昼に買うおにぎりとスープは合わせて六十円増えていた。

澪は明細の裏に、去年と今の一日分を書き並べた。受け取る額は増えた。それでも交通費と昼食を引き、残りをカメラの価格で割ると、必要な勤務日数はむしろ二日多い。

数字を見ていた澪に、店長が値札を差し替えながら言った。

「鉢も土も運賃も、少しずつ上がってね。花まで急に育ってくれればいいんだけど」

澪は笑い、それから明細の時給を丸で囲んだ。金額そのものが増えることと、その金額で買えるものが増えることは同じではない。財布の数字は名目、実際に持ち帰れる量は物価を通して見た実質。言葉にすると、遠のいた理由が見えた。

帰り際、カメラ代の目標額だけを書き換えるのはやめた。毎週の交通費と昼食代も同じ表に加え、あと何日働けば届くかを更新する。閉店前の温室で、澪は値札の外れた小さな鉢を棚へ戻した。

次の給料日に、同じ計算をもう一度するために。

人物紹介
相沢澪(あいざわ・みお)
十六歳の高校二年生。身近な違和感を放置できず、分からない数字は自分で確かめたくなる性格。投資経験はない。

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