【フィクション・投資に関する注意】
本作は架空の小説です。人物、企業、商品、学校、出来事などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。本作は特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。投資には元本割れなどのリスクがあります。為替相場は変動し、外貨建ての取引では円換算額が変わることがあります。実際の判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家へご相談ください。
『放課後、数字の向こう側。』全30話中 第6話
高校二年生の相沢澪が、身近な出来事を入り口に、投資と経済の仕組みを一つずつ確かめていく連載です。
前話まで
ヨーグルトの内容量から費用と利益を、祖母の計算表から複利と時間を、ゲーム代からサンクコストを、母の議決権行使書から株式を持つ意味を、カフェの冷蔵庫故障から借入の利息と手元資金を確かめた。
第6話
放課後の美術室で、国際交流委員の澪は見積書と予算表を見比べた。歓迎会の壁を飾る紙花と光沢紙は、交換留学生のリナの故郷にある店へまとめて注文する予定だった。見積もりを取った二週間前なら予算内だったのに、決済画面の円表示は三千八百円も増え、予算係の赤鉛筆がそこで止まっている。
「品物の値段は変わってないよ」リナが外貨の欄を指した。「同じ百でも、今日は百を払うために前より多くの円が要る」
澪は見積もり時と今日の換算額を一枚の紙に並べた。外国の通貨で決まった価格に、送料を足し、その日の交換比率で円へ直す。円一単位で受け取れる外貨が少なくなれば、店が値上げしなくても輸入する側の円の支払いは膨らむ。逆なら円換算額は小さくなるが、今ここで必要なのは予想ではなく、足りない分への対処だった。
二人は注文をいったん止め、美術準備室を探した。去年の模造紙、近所の印刷所でもらえる端紙、校庭で剪定された枝。光沢紙だけを必要な枚数に減らし、紙花は端紙を細く折って作る。リナは故郷の飾り結びを澪に教え、澪は藍色のスモックに糊をつけながら試作品を天井から下げた。
翌日、委員会の机には、外貨で買う物、国内で集める物、円換算額が変わった場合の予備費を分けた新しい表が置かれた。色も形も揃わない飾りは、窓からの風を受けるたび、互いに違う影を壁へ重ねた。
人物紹介
相沢澪(あいざわ・みお)
十六歳の高校二年生。身近な違和感を放置できず、分からない数字は自分で確かめたくなる性格。投資経験はない。
リナ
澪と同い年の交換留学生。故郷の飾り結びが得意で、国際交流委員会の歓迎会準備に参加する。

