【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。
「青の余白で、生きている。」全50話中 第34話
八月。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。
前話まで
毎日、決まった時間に丘でラジオを回した。周波数を書き留め、雑音の変化を比べる。電池を節約するため、探索は十五分だけ。 ある夕方、日本語の天気予報が断片的に聞こえた。地名までは分からない。それでも二人は拍手した。聞こえるということは、こちらの信号も届く可能性がある。
第34話 アンテナ丘の旗
目立つ布を縫い合わせ、丘に大きな旗を立てた。海側と空側の両方から見えるよう、白い石で二人を示す「SOS 2」を作る。
信号鏡、煙、旗、文字。救助は一つの方法に賭けない。ひまりは毎朝、旗のほつれを直した。希望も道具と同じで、手入れが必要だった。
旗に使える布は色がばらばらだった。ひまりは暗い森を背景にしたとき目立つ順へ並べ、奈緒が縫い合わせる。旗竿は風で倒れても小屋へ当たらない位置に立てた。
丘の文字を「SOS 2」に変えるとき、二人という数字が不思議に見えた。奈緒と出会う前なら書けなかった数字だ。ひまりは石の間隔を測り、上空から線に見えるよう何度も丘の反対側から確かめた。
旗を揚げると、継ぎ合わせた布が一度だけ竿へ巻きついた。ひまりは丘を下り、結び目の間隔を広げる。次は風を受けても大きく開いた。奈緒が浜から両腕で丸を作る。遠く離れて確かめて初めて、目立つ色と動きが救難の合図になった。
竿の根元へ置いた石は、遠くから「2」の一部に見えるよう並べた。旗と文字を別々に作らず、一つの丘全体を合図として整えた。
人物紹介
水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。
篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。
