この話はフィクションです。舞台となる町や施設、人物、出来事は創作です。実在する地域・団体・人物とは関係ありません。
第12話 消えた名前
卒業アルバムには森戸沙耶の写真があるのに、名簿では名前が修正液で消されていた。学校の正式な記録には転校と残る。誰かが秘密にしたというより、途中でいなくなった子を、編集時にどう扱うか迷った跡だった。
藤崎先生は当時の広報紙を探し、沙耶が調査グループの中心だったと突き止めた。彼女の父親の転勤が突然決まり、提案書の提出日に間に合わなかった。残った四人も、中心を失って動けなくなったらしい。
澪は森戸さんへ直接聞こうとしたが、用務員室は施錠されていた。扉の下から、『地下通路、十八時十二分』と書かれた細い紙が出ている。筆跡は黒いノートではなく、角張った大人の字だった。
その時刻は、調査ノートに記された二十五年前の測定時刻と同じだった。悠斗は森戸さんが誘導している証拠だと言いながらも、妹の記録をなぜ怪談めかして再現するのか納得できなかった。
澪は、森戸さんが話せないなら記録から先に確かめようと決めた。ただし地下通路へは母と藤崎先生に行き先を伝え、入口だけを調べる。最初のころなら、ノートに示されたまま飛び出していただろう。
廊下を離れると、施錠された用務員室の中で電話が一度鳴った。森戸さんは校庭にいて、部屋には誰もいなかったという。澪の調査ノートには、また右側の欄へ残す事実が増えた。

