【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。
「青の余白で、生きている。」全50話中 第49話
二〇二七年三月、発見の日。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。
前話まで
昼過ぎ、低いエンジン音が島を回った。幻聴ではない。白い機体が雲の下に現れ、海岸線に沿って飛んでいる。 二人は丘へ走った。旗を振り、鏡を光らせ、浜では用意した煙が上がる。機体は一度通り過ぎた。ひまりの膝が崩れかけたとき、翼が傾き、こちらへ戻ってきた。
第49話 見つけた
機体が旋回し、翼を左右に振った。見つけた、という合図だった。奈緒は叫び、ひまりは泣きながら旗を振り続けた。
後に分かったことだが、十一月のメッセージは一部だけ中継局へ届いていた。位置情報は欠けていたものの、事故海域の捜索記録が再検討され、季節風と漂流物の解析から島が絞られたのだ。
翼を左右へ振る動きが見えたとき、奈緒は「確認された」と叫んだ。ひまりは返事をする代わりに旗を振り続けた。止めたら見失われる気がした。
機体は島を二周し、海の方角へ去った。救助がすぐ来るとは限らない。二人は煙を維持し、浜の危険な岩礁を改めて確認した。喜びで手順を忘れないよう、ボートが入れる礁湖へ目印を増やした。
二周目の機体は、丘の真上で翼を傾けた。偶然の旋回ではない。ひまりはそう信じたかったが、旗を下ろすことはできなかった。視界から完全に消えるまで、奈緒と交代しながら赤と白の布を振り続けた。
夕方になっても、海には船影がなかった。助かったと思った直後だからこそ、待つ時間は以前より長く感じられた。二人は水を運び、火を整え、礁湖へ近づくための目印を置いた。救助が来るなら、その瞬間に事故を起こさない準備が必要だった。
夜、ひまりは何度も沖を見た。暗闇に光を探すたび、見間違いの星が増えた。奈緒は隣へ座り、何も断言しなかった。ただ、明日も同じ合図を出せるよう交代で眠ろうと言った。希望は、手順をやめる理由にはならなかった。
夜明け前、沖の低い位置に規則正しい光が現れた。星なら動かない。ひまりが奈緒を起こすと、二人は声を潜めたまま点滅を数えた。光はゆっくり横へ移り、いったん島影へ隠れる。喜びで火を大きくしすぎないよう、準備していた乾いた枝だけを足した。
礁湖の入口へ白い布を二本立て、岩礁のない線を示した。船が近づいたとき、歓声ではなく安全な進路で迎える準備を整えた。
人物紹介
水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。
篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。