【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。
「青の余白で、生きている。」全50話中 第39話
十月。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。
前話まで
ソーラーパネルのケーブルが断線しかけた。ひまりは被覆を慎重に整え、漂着した電気部品とテープで固定した。濡れない箱を作り、接続部を守る。 充電表示が戻る。技術は都会だけのものではない。観察し、試し、記録し、危険なら止める。その姿勢自体が、島で役に立つ技術だった。
第39話 十月の風
朝晩が冷え始めた。二人は衣類の重ね方を変え、乾いた繊維を寝床へ追加した。濡れた服のまま眠らず、風を避ける。
夏には邪魔だった毛布が宝物になった。季節は同じ島を別の場所にする。ひまりは月ごとの地図を描き、日陰、水場、風向きの変化を書き込んだ。
風が寝床の下へ入り、夜中に何度も目が覚めた。翌朝、二人は床材を全部出し、湿ったものを除いて乾かした。毛布を増やすだけでは、湿気も閉じ込めてしまう。
日中に乾いた繊維を重ね、入口へ短い風よけを付ける。服は一枚を厚くするのではなく、乾いた薄手を重ねた。作業後の小屋は見た目が変わらない。それでも夜、背中から奪われる熱が少なくなった。
新しく重ねた寝床へ横になると、地面の硬さより先に乾いた草の匂いがした。奈緒が壁際の隙間へ布を詰め、ひまりは入口の風よけを少しだけ開ける。塞ぎすぎれば湿気がこもる。暖かさと空気の通り道が釣り合う位置を、二人の呼吸で探した。
朝、寝床の下へ手を入れると昨日までの冷たさがなかった。ひまりは温度の違いを奈緒にも確かめてもらい、乾いた繊維を足した日付を残した。
人物紹介
水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。
篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。
