この話はフィクションです。舞台となる町や施設、人物、出来事は創作です。実在する地域・団体・人物とは関係ありません。
第15話 緑橋の下の封筒
翌日の放課後、二人は森戸さんと緑橋へ向かった。橋脚の陰、子どもの目線でなければ見落とす高さに、防水封筒が貼られている。森戸さんは場所を知らず、封筒を見た瞬間に足を止めた。
中には暗渠化前の水路図と、三つの赤丸があった。抜け道、地下通路入口、旧水門へ続く坂。鉛筆の下図は二十五年前のものだが、赤い印は最近つけられている。
森戸さんは、赤丸を描いたのは自分だと認めた。学校や町へ改めて相談するため、残る危険箇所を調べ直していたという。しかし封筒をここへ置いた覚えはなく、地図は鍵のかかった木箱にしまっていたはずだった。
澪は川面の赤い反射、傘、金属板について一つずつ尋ねた。森戸さんはすべて自分の仕掛けだと答えた。昔の資料へ関心を向けさせたかった。だがノートを交番から持ち出したこと、校内放送、沙耶の声は否定した。
『本当のことへ嘘の怖さを混ぜたら、誰も信じられなくなる』。澪の言葉に、森戸さんは頭を下げた。善意でも、子どもを試すような方法を選んだ責任は消えない。三人は今後、仕掛けを使わず記録を公開すると決めた。
水路図を写していると、封筒の内側に薄い文字が浮かんだ。『三人で歩け』。森戸さんにも見えた。妹の字だったのかと問われても、彼は濡れた紙を見つめたまま答えられなかった。
