PR

青の余白で、生きている。第25話「半分の誕生日」

AI連載小説

【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。

「青の余白で、生きている。」全50話中 第25話
六月、ひまりの誕生日。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。

前話まで

ひまりが発熱した。奈緒は食事を軽くし、水分を少しずつ渡し、体温と意識の状態を記録した。無理に動かさず、日陰と風通しを整える。 夜、ひまりは母を呼んだ。奈緒は母親のふりをせず、「ここにいるよ」とだけ答えた。翌朝、熱は下がった。ひまりは弱ったことを謝り、奈緒は生き物は休むものだと叱った。

第25話 半分の誕生日

六月、ひまりは十五歳になった。奈緒は貝殻をつないだ飾りを作り、少量の保存ビスケットを砕いて焼いた。カボチャの若葉は食べず、飾りに一枚だけ借りた。

願い事を聞かれ、ひまりは「来年は家で怒られたい」と答えた。宿題を忘れ、寝坊し、普通に怒られたい。ふたりは笑いながら、小さなケーキを半分にした。

奈緒は誕生日を前日まで黙っていた。漂着布の飾りが完成する前に見つかりそうになり、道具箱ごと背中へ隠したという。ひまりはその話を聞いて笑った。

ろうそくの代わりに細い枝を一本立てた。火は点けず、目を閉じて息だけ吹く。願いを口にすると消えそうで、心の中に置いた。食べ終えた後、二人は家族の誕生日を全部思い出せる範囲で書き、帰ったら遅れた分を祝う約束をした。

誕生日の飾りを外す前、ひまりは漂着布の小さな結び目を一つだけ残した。次の雨でほどけるかもしれない。それでも今日が確かにあった印だった。奈緒は何も言わず、その隣へ貝殻を置く。豪華ではない二つの飾りが、夕暮れの小屋で長い影を作った。

十四歳と書いた数字の横へ、ひまりは十五歳までに帰るとは書かなかった。期限にできない願いを縛らず、今日の日付だけを丁寧に囲んだ。


人物紹介

水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。

篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。

タイトルとURLをコピーしました