この話はフィクションです。舞台となる町や施設、人物、出来事は創作です。実在する地域・団体・人物とは関係ありません。
第04話 閉店後のチャイム
翌日のページには、『閉店後、短い音を聞け』とだけあった。二人は商店街の防犯カメラに映る場所を選び、店じまいを待った。最後のシャッターが下りると、古い防災スピーカーから学校のチャイムが一秒だけ鳴った。
音は短かったが、灰色の通り全体が息を止めたようだった。悠斗が録音波形を確認すると、チャイムの下に人の声らしい揺れがある。速度を落とすと、『二つ目』という三音に聞こえた。
スピーカーの支柱には新しい工具傷と、剥がされたテープの跡があった。足元には『二つ目、音の印』と書かれた紙片。紙は学校で使う古い原稿用紙で、欄外に二十五年前の校章が印刷されていた。
紙を拾った瞬間、閉店した文具店の中で何かが倒れた。駆けつけた店主が鍵を開けても、棚は整ったままだった。ただ、奥の壁に掛けた古時計だけが、実際より二十五分遅れていた。
店主は原稿用紙を見ると、昔この商店街で中学生が危険箇所の聞き取りをしていたと話した。けれど報告がどうなったかは知らない。『子どもの調べものだと思って、まともに聞かなかったな』と、閉めた店内で小さく言った。
澪は初めて、手がかりの向こうに昔の誰かの失望を感じた。ノートに従わされている腹立ちは消えない。それでも二人は、場所、時刻、仕掛け、証言を一冊の調査用ノートへ書き始めた。

