【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。
「青の余白で、生きている。」全50話中 第47話
二〇二七年二月末。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。
前話まで
二月、二人はこれまでの記録を一枚の大きな地図にまとめた。水場、危険な崖、漁の範囲、季節風、避難場所、漂着しやすい浜。 最初は恐怖の塊だった島が、読み解ける場所になっていた。ひまりは島を好きとは言えなかった。それでも憎むだけでもなかった。ここに一年近く、生かされている。
第47話 故障
ラジオの音が出なくなった。スマホも充電口の接触が悪い。文明の細い糸が、一本ずつ切れていくようだった。
ひまりは慌てず、接点を乾かし、無理に通電しない。奈緒は鏡と旗と煙の準備を点検した。電子機器がなくても救難は続けられる。二人が覚えた手順は壊れなかった。
ラジオを振っても、雑音さえ戻らなかった。ひまりは悔しさから分解しようとしたが、交換部品も回路図もない。直せないものへ最後の電力を使うより、救難用ライトを残すことにした。
スマートフォンの接触不良には、ケーブルの角度を印で決め、充電中は動かさない。電子機器を失う怖さはあったが、旗と煙と鏡はまだ使える。二人は丘までの道を歩き、暗くても迷わない目印を増やした。
沈黙したラジオを箱へ戻す前、奈緒はつまみを零の位置へ合わせた。ひまりは電池を外し、液漏れがないか布越しに確かめる。役目を終えた道具も乱暴には扱わない。代わりに丘の鏡と旗を点検し、電気がなくても届く合図へもう一度手を戻した。
ラジオをしまった箱には、故障と大きく書いた。暗闇で間違えて頼らないようにし、使えるライトと信号鏡は別の袋へ移した。
人物紹介
水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。
篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。
