【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。
「青の余白で、生きている。」全50話中 第37話
九月。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。
前話まで
塩害を免れた蔓に、小さな実が一つ残っていた。九月、両手に乗るほどに育ったカボチャを収穫する。 種は来年のために乾かし、実は煮物と薄焼きにした。甘さに二人とも黙った。植えた日の自分たちから、時間を越えて贈り物が届いたようだった。
第37話 知らない光
夜の水平線に白い点が動いた。船か、星か。ひまりは火へ生葉を入れ、奈緒はライトで規則的に合図した。
光はしばらくして消えた。返事はなかった。翌朝の落胆は大きかったが、二人は信号手順を改善した。見逃された夜を、次に見つけられる準備へ変えた。
光は一定の速さで動いているようにも、波で揺れているようにも見えた。奈緒が鏡、ひまりがライトを担当し、決めた間隔で合図する。火へ葉を載せるのは、風が沖へ向いた瞬間だけにした。
腕が痛くなっても、光が見える間は続けた。消えた後、二人はすぐ結論を出さなかった。船だったのか、届いたのかは分からない。翌朝、合図の間隔と立ち位置を変え、次に同じ光を見たときの役割を決め直した。
沖の光が消えた場所を、ひまりは地図の端へ小さく記した。距離も正体も分からないため、線では結ばない。奈緒は見えた時刻と色だけを書き足す。希望に形を与えすぎれば、違ったときに立てなくなる。二人は空白を残したまま、次の合図を準備した。
次に光を見たときのため、鏡を置く石へ足形を刻んだ。暗くても同じ角度へ立てるよう、右足と左足の位置を別々に残した。
人物紹介
水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。
篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。

