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青の余白で、生きている。第29話「台風の目」

AI連載小説

【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。

「青の余白で、生きている。」全50話中 第29話
七月の台風。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。

前話まで

日差しが強くなると、魚を開いて塩気と風で乾かした。食べる前には十分に加熱し、匂いや見た目がおかしいものは捨てる。もったいなさより安全を選ぶ。 木の実は種類を確実に見分けられる少数だけ。保存容器には日付を刻んだ。棚に食料が並ぶと、今日の獲物がない日にも焦らずにすんだ。

第29話 台風の目

七月、海と空の色が変わった。これまでより大きな台風が来る。ふたりは海辺の小屋を捨て、アンテナ丘の風下にある浅い岩窪みへ避難場所を作った。

必要品だけを持ち込み、入口を塞ぎすぎず、排水路を確保した。轟音の中、ひまりは奈緒の手を握った。静かな時間が突然訪れ、また風が反対から吹いた。台風の目だった。

鳥の動きと波の向きが、いつもの嵐と違った。ラジオからは言葉を拾えなかったが、空気が重い。奈緒が避難を提案すると、ひまりは青葉荘を離れることに抵抗した。

それでも二人は、持てる量を実際に背負って決めた。水、救急用品、火種、毛布、通信機器。思い出の板は残す。岩窪みに着いてから、ひまりは忘れ物に気づいたが戻らなかった。取りに戻らない判断も、準備の一部だった。

岩窪みへ着いたとき、二人の背中は汗で濡れていた。台風の風が来れば、その湿りが身体を冷やす。着替えを先に済ませ、濡れた服を岩へ広げる。青葉荘を心配する気持ちは消えなかったが、いま守れるのは目の前にいる二人だけだった。

避難場所の天井から落ちる砂を、布で受けるようにした。風が強まるたび粒の量を確かめ、岩の隙間が広がっていないか灯りを絞って見た。


人物紹介

水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。

篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。

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