【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。
「青の余白で、生きている。」全50話中 第21話
六月。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。
前話まで
気圧が下がり、鳥が低く飛んだ。ふたりは屋根を縛り直し、道具を箱へ入れ、火種を乾いた容器へ移した。その夜、風が島を丸ごと持ち上げようとした。 小屋の一部は裂けたが、骨組みは残った。朝、SOSの石は散っていた。ひまりは黙って拾い始め、奈緒も隣で拾った。直せるものがあるうちは、絶望に全部を渡さなくていい。
第21話 ソーラーパネル
嵐の漂着物から、小型の折り畳み式ソーラーパネルを見つけた。端子は錆びていたが、奈緒が乾かし、布で丁寧に磨いた。
晴天の午後、モバイルバッテリーの表示が一つ増えた。発電量は小さい。それでもスマホを週に一度起動し、位置情報の取得と通信を試せる。2026年の文明が、太陽一枚ぶんだけ戻ってきた。
パネルを日に向けても、最初は何の表示も出なかった。奈緒が端子を触ろうとする手を止め、二人で砂と水分を落とした。影が一部にかかるだけで発電が下がるため、時刻ごとに置き方を変える。
表示灯が点いた瞬間、ひまりは息を止めた。一つ増えた目盛りは小さいが、通信を試す回数を未来へ残せる。二人は充電中の機器へ触れすぎないよう、周囲を石で囲って目印にした。
充電表示が一目盛り増えるまで、二人はパネルへ影を落とさない位置で待った。雲が横切るたび数値が止まり、日差しが戻るとまたゆっくり動く。ひまりは石へ時刻を書き、最も効率のよい向きを比べた。わずかな電気にも、島の一日と同じ速さがあった。
パネルの角度を支える石には、午前と午後で別の印を刻んだ。日差しを追うたび最初から調整せず、印へ合わせればよくなった。
人物紹介
水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。
篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。
