この話はフィクションです。舞台となる町や施設、人物、出来事は創作です。実在する地域・団体・人物とは関係ありません。
第24話 最後の報告書
翌日、澪と悠斗は点検結果を追記した。実施された対策、保留された提案、次の確認日を分けて書く。『解決した』という便利な言葉を使わず、何が変わり、何が残ったかを明確にした。
町は報告の要約を掲示板と学校だよりへ掲載した。怪異の話は載らず、『中学生による夕方の通行安全調査』と紹介された。澪は少し物足りなく感じたが、怖さを消費せず成果を共有する形として納得した。
森戸さんは二十五年前の提案書へ、今回の報告書と受付記録を綴じた。古い紙の最後に新しいページが重なり、未完だった一冊がようやく提出済みの資料になった。原本は学校資料室で保管される。
ただ、黒いノートが交番から学校へ戻った理由、壊れたテープが再生された理由、沙耶の筆跡が現れた理由は残った。人の仕掛けを明らかにしても、すべてを人為に押し込めることはできない。
最後から二枚目のページには、『ありがとう』と一語だけ書かれていた。森戸さんの字でも、澪や悠斗の字でもない。筆跡鑑定のように答えを追うこともできたが、澪は写真だけを残してページを閉じた。
わからないものを放置するのではない。誰かを傷つけたり、危険を隠したりしない謎まで、無理に暴かないという選択だった。調査を始めたころより、澪は答えのない余白を怖がらなくなっていた。