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青の余白で、生きている。第48話「三月のエンジン音」

AI連載小説

【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。

「青の余白で、生きている。」全50話中 第48話
二〇二七年三月。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。

前話まで

ラジオの音が出なくなった。スマホも充電口の接触が悪い。文明の細い糸が、一本ずつ切れていくようだった。 ひまりは慌てず、接点を乾かし、無理に通電しない。奈緒は鏡と旗と煙の準備を点検した。電子機器がなくても救難は続けられる。二人が覚えた手順は壊れなかった。

第48話 三月のエンジン音

昼過ぎ、低いエンジン音が島を回った。幻聴ではない。白い機体が雲の下に現れ、海岸線に沿って飛んでいる。

二人は丘へ走った。旗を振り、鏡を光らせ、浜では用意した煙が上がる。機体は一度通り過ぎた。ひまりの膝が崩れかけたとき、翼が傾き、こちらへ戻ってきた。

音がした瞬間、二人は互いの名前を呼んだ。幻聴なら、同時に聞こえるはずがない。準備していた葉を火へ載せ、ひまりは旗、奈緒は鏡を持って丘へ走る。

機体が通り過ぎた数秒は、一年より長く感じた。ひまりは追いかけるように丘の端まで行き、奈緒に腕をつかまれる。次の瞬間、遠くの翼が傾いた。機体は大きな円を描き、島へ戻ってきた。

機影が戻ってきても、ひまりはすぐに安心できなかった。見えている間に、こちらの存在を伝え続けなければならない。旗を振る腕が重くなり、息が喉に引っかかる。奈緒は煙の向きを見ながら火へ葉を足し、途切れそうになるたび「まだ見てる」と声を上げた。

翼は島の上をもう一度横切った。今度はさっきより低く、窓の並びまで見える気がした。ひまりが笛を吹くと、鋭い音が風にちぎれた。それでもやめなかった。届いたかどうかではなく、いまできる合図を全部続ける。それだけを考えた。

機体が遠ざかったあと、二人は丘へ座り込んだ。喜びたいのに、通り過ぎただけかもしれないという怖さが先に来る。奈緒が震える手を握り、「見つけてもらう準備はできた」と言った。ひまりは何度もうなずき、煙が消えないよう立ち上がった。

旋回した機体の腹が日光を返し、丘の上で一瞬だけ白く光った。ひまりはその反射を見失わないよう旗の位置を変える。奈緒は煙の量を保ちながら、風下へ下がった。二人が別々の合図を同時に続けると、機体は島を中心にもう一つ大きな円を描いた。

機体の音が聞こえなくなっても、煙の柱はしばらく保った。別の角度から確認される可能性を考え、丘を離れる時刻を二人で決めた。


人物紹介

水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。

篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。

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