【フィクション・投資に関する注意】
本作は架空の小説です。人物、企業、商品、学校、出来事などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。本作は特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。投資には元本割れなどのリスクがあります。実際の判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家へご相談ください。
『放課後、数字の向こう側。』全30話中 第2話
高校二年生の相沢澪が、身近な出来事を入り口に、投資と経済の仕組みを一つずつ確かめていく連載です。
前話まで
ヨーグルトの内容量の変化から、価格だけでなく企業の費用と利益を見ることを覚えた。
第2話
雨の土曜、澪は祖母の押し入れ整理を手伝った。古い裁縫箱の下から、黄ばんだ二枚の計算表が出てくる。どちらも最初は一万円で、祖母が母の誕生祝いに作った比較表だった。
片方は毎年三百円を足してある。もう片方は、前年の残高に三パーセントを掛け、増えた分も翌年の元へ含めていた。
「同じ三パーセントなのに、数字がずれてる」
澪は電卓を借り、十年分を打ち直した。初めの一年はどちらも一万三百円。二年目、前者は一万六百円、後者は一万六百九円。九円しかなかった開きは、年を重ねるほど広がった。
澪は二十年目まで計算し、途中で一度増え方を間違えた。祖母は消しゴムを渡し、「去年の増えた分を置いてきたね」と笑った。足し算の列と、残高へ掛ける列は、後半になるほど離れていった。
祖母は当時の金融商品を勧めるためではなく、母に時間の計算を見せる宿題として作ったらしい。実際には利率も税も手数料も変わり、元本が保証されない運用もある、と表の端に赤字で書いてあった。
澪は、翌週買うつもりだった二千円のイヤホンを思い出した。安い方へ変えれば千円残る。しかし我慢を続けるだけでは、きっと封筒ごと忘れる。
そこで「三か月後に見直す」と日付を書き、千円札を入れた。増やす方法はまだ決めない。調べる期限だけは決めた。
祖母が押し入れの奥から、今度は母の小学生時代の通知表を見つけた。澪は封筒を閉じ、雨音に負けない声で母を呼んだ。
人物紹介
相沢澪(あいざわ・みお)
十六歳の高校二年生。身近な違和感を放置できず、分からない数字は自分で確かめたくなる性格。投資経験はなく、日常の出来事から経済の見方を学び続けている。
