みなさんは、いわゆる「宮型霊柩車(みやがたれいきゅうしゃ)」を最近見かけたことはありますか?
まるで小さなお寺や仏壇がそのまま乗っているかのような、あの豪華で独特な形をした霊柩車です。昔はよく街中で見かけましたが、言われてみれば最近はすっかり見なくなった気がしませんか?
今回は、宮型霊柩車を見かけなくなった理由と、昔よく聞いた「霊柩車を見たら親指を隠しなさい」という言い伝えの由来についてご紹介します。
1. なぜ宮型霊柩車を見かけなくなったのか?
かつては葬儀の象徴とも言えた宮型霊柩車ですが、現在ではほとんど姿を消してしまいました。その背景には、いくつかの大きな変化があります。
- 葬儀の形の変化 近年は、大勢で盛大に見送る一般葬よりも、家族や親しい人のみで行う「家族葬」や、お通夜を行わず火葬のみを行う「直葬(火葬式)」が増加しています。
- 周囲への配慮(景観や感情面) 住宅街を宮型霊柩車が通る際、「死を強く連想させてしまう」「派手すぎて驚く」といった近隣住民への配慮から、自治体や火葬場によっては乗り入れや使用が自粛されるケースが増えました。
- 製造や維持の難しさ 車の保安基準(突起物に関する規制など)の厳格化に加え、宮型を作る職人の高齢化や後継者不足が進み、新しく製造・維持することが非常に難しくなっています。
- 主流が「洋型」や「バン型」へシフト 現在では、パッと見では霊柩車と分からないような高級外車をベースにした「洋型霊柩車」や、白・シルバーなどを基調とした「バン型霊柩車」が主流になっています。
時代の流れや人々の価値観の変化にともない、街の風景も少しずつ変わってきているのですね。
2. 「霊柩車を見たら親指を隠す」のはなぜ?
宮型霊柩車といえば、子どもの頃に「霊柩車を見たら親の死に目に会えなくなるから、親指を隠しなさい(握り込みなさい)」と大人から言われた記憶がある方も多いのではないでしょうか。
このちょっと不気味で不思議な言い伝えには、いくつかの由来や説があります。
- 「親指」=「親」を連想させるため 「親指」という文字や言葉の通り、文字通り「親」を連想させるため、親に不幸が訪れるのを防ぐための一種のおまじない(魔除け)として指を隠したという説。
- 霊魂や「穢れ(けがれ)」の侵入を防ぐため 昔の人々は、親指(特に爪の隙間など)は人間の魂や邪気が出入りする隙間だと考えていました。死や不浄なもの(穢れ)が身体に入り込まないよう、ガードするための行動だったと言われています。
- 仏教の作法(礼法)の名残 仏教の礼儀作法において、手を重ねて敬意を示す所作(叉手:さしゅ)があり、それが一般の人々の間で少しずつ形を変えて伝わったのではないかという説もあります。
まとめ
科学的な根拠こそありませんが、「親指を隠す」という言い伝えには、死に対する畏怖の念や、身内を災いから守りたいという先人たちの切実な願いが込められていました。
時代の変化とともに、街から宮型霊柩車が消え、こうした言い伝えを耳にする機会も少なくなってきています。ですが、昔の人々の暮らしや死生観を知るうえで、こうしたちょっとした言い伝えや風習の背景を辿ってみるのもいいかもしれませんね。
