【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。
「青の余白で、生きている。」全50話中 第14話
五月、合流直後。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。
前話まで
岬の先で、オレンジ色の布が振られた。「待って、こっち!」。声の主は二十七歳の篠崎奈緒だった。船の客室係で、別の救命いかだに乗った後、島の反対側へ流れ着いたという。 ひまりは走り、途中で転び、それでも立った。奈緒も泣いていた。ふたりは触れていいか確かめてから抱き合った。人の体温は、火よりも強く「助かった」と思わせた。
第14話 情報交換
奈緒は救命いかだから水、ナイフ、救急用品、信号鏡を持ち出していた。ひまりには火と丈夫な小屋がある。ふたりの持ち物を並べると、ばらばらの道具が生活の一式に見えた。
船は遭難信号を出したはずだが、事故時の位置からかなり流された可能性がある。奈緒は希望だけでなく、不確かな点も話した。ひまりはその正直さを信じた。
奈緒のナイフを見たひまりは、何でも切れる魔法の道具のように感じた。だが奈緒は刃を乾かし、使う場所を決め、必ず鞘へ戻した。救急用品も全部は開けず、期限と包装を確認する。
ひまりが作った地図を広げると、奈緒は驚いて何度も見直した。「これがなかったら、私はまだ反対側で待ってた」。褒められたひまりは嬉しかったが、同時に責任の重さも感じた。二人は分からない場所を、分からないまま地図へ残した。
持ち物を並べ終えると、二人の間に沈黙が落ちた。ナイフも薬も貴重だったが、どちらが何を知っているかは道具以上に重要だった。奈緒が結び方を実演し、ひまりが水場までの地図を指す。知らないことを隠さず交換するうち、品物の山が初めて共同の備えになった。
救急用品の包装へ、奈緒は開封日を書く場所を決めた。ひまりはその横に保管場所を記し、暗くても迷わず取り出せる順へ箱の中身を並べ直した。
人物紹介
水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。
篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。
