【フィクション】本作は架空の小説です。人物、島、船舶、企業、事故、地名、救助活動などはすべて創作であり、実在のものとは関係ありません。作中の行動は物語上の描写です。実際の災害時には、公的機関の指示と専門的な安全情報を優先してください。
「青の余白で、生きている。」全50話中 第18話
五月。海難事故で無人島へ流れ着いた中学生・水城ひまりが、水、食料、住居、衣類、通信手段を確保しながら、救出までの一年を生き抜く現代サバイバル連載です。
前話まで
制服は擦れ、塩で硬くなっていた。奈緒は救急箱の針と糸で裂け目を繕い、漂着した速乾シャツをひまりの寸法に詰めた。肌に当たる部分は柔らかな布を重ねる。 日差しを避ける帽子、手を守る布、足を傷つけない靴。見た目より乾きやすさと交換しやすさが大切だった。洗濯日は交代で一組を着て、一組を真水ですすいだ。
第18話 水の畑
雨が降らない日が続き、貯水が減った。ふたりは屋根の面積を広げ、竹に似た中空の茎で樋を作った。最初の汚れた雨は流し、その後の水だけを容器へ入れる。
容器には採取日を書き、飲用と洗浄用を分けた。水は見つけるものではなく、育てるもの。並んだボトルを、ひまりは「水の畑」と呼んだ。
新しい樋は最初の雨で外れ、集めた水の半分を地面へこぼした。ひまりは悔しくて茎を蹴りそうになり、奈緒に止められた。壊れた位置を見ると、支えの間隔が広すぎた。
二度目は短い支えを増やし、容器の入口へ布を張った。雨脚が強くなっても樋は耐えた。二人は満杯になった容器を奥へ移す。水の重さで腕が震えたが、その重さは何日分もの安心だった。
新しい樋の下で、二人は雨粒が最初に流れる道を見守った。布の濾し口へ葉が一枚張りつき、水が脇へこぼれ始める。ひまりが枝で葉を外すと、細い流れが容器の中央へ戻った。完成した仕組みも放っておけば働かないことを、満ちていく水音が教えた。
満杯の容器へ蓋をすると、持ち上げる必要がない場所まで樋を延ばす案が生まれた。二人は次の雨までに、地面の傾きを測ることにした。
人物紹介
水城ひまり
物語開始時は十四歳の中学生。観察したことを写真やメモに残す習慣があり、限られた道具を工夫して使う。不安や失敗を隠すのではなく、次の判断材料へ変えながら成長していく。
篠崎奈緒
二十七歳の船客室係。島の反対側で生き延び、第13話でひまりと合流する。応急手当と乗客対応の経験を生かして安全を支えるが、一方的に命令せず、ひまりの意見と成長を尊重する。

